0. Prologue
わざわいなるかな、おのれ自ら滅されないのに、人を滅ぼし、 だれも欺かないのに人を欺く者ものよ。 あなたが滅すことをやめたとき、あなたは滅され、 あなたが欺くことを終えたとき、あなたは欺かれる。 ...
わざわいなるかな、おのれ自ら滅されないのに、人を滅ぼし、 だれも欺かないのに人を欺く者ものよ。 あなたが滅すことをやめたとき、あなたは滅され、 あなたが欺くことを終えたとき、あなたは欺かれる。 ...
雨季を迎えたダウンタウンは、空から降り注ぐ激しい雨に包まれていた。メインストリートを行き交う人々は突然のスコールに苛まれ、ぐっしょりと濡れた衣服に気にも留めずに家路を急いでいる。歩道にできた大きな水たまりは水面にネオンライトを映し、ゆらゆらと静かにゆらめいていた。 ...
ジェームズは電話を切ると、咥えていたタバコを灰皿に押し付け、エンジンキーを回した。クラッチを浅く踏み、軽くアクセルを踏み込んで、ヴィクターが待つ警察署へ車を走らせる。雨は時間を経るにつれて激しさを増し、雨粒が車体を容赦なく打ち付けた。直近の車検で交換したワイパーも、この豪雨には役に立たず、視界は常にぼやけている。 ...
イーサンはジェームズから車のキーを受け取ると、右側のサイドドアに差し込み、静かに開けた。ジェームズは軽く頷いて礼を言い、車内に滑り込む。ドリンクホルダーに手を突っ込み、煙草の箱らしきものを探り当て、指で淵をなぞりながら一本だけ取り出す。ついでにライターも拾い上げ、火をつけて深く吸い込んだ。フエゴが待ち伏せていたら味わえなかったであろう煙を愛おしそうにゆっくりと味わう。この一服こそが、ジェームズにとって生を実感するのに最高の方法だった。 ...
スラム街に入った途端、ジェームズとイーサンは異様な空気を肌で感じ取った。窓の外に目をやるが、通りには人影ひとつ見当たらない。街灯の明かりは消え、まるで時が止まったように辺りは静寂に包まれていた。連日ニュース番組を騒がせていたこの街は、今や暗闇に沈むゴーストタウンと化していた。 ...